徳島県内に今年も新たに8社がSOを開設しました。2012年に神山町に3社が進出してから、これで計26社に。開設場所は神山、美波両町以外へと広がり、建築業などIT以外の業種の進出も目立ちます。
各社は企業活動を活発化させるだけではなく、地域との交流事業や飲食店など新たな事業にも乗り出し波及効果をもたらすなど、徳島のSOは新たな局面を迎えつつあります。
美波町の地域活性化支援会社あわえは、町内に明治時代から残る銭湯「初音湯」を地域住民が集まれる交流拠点にリニューアルしました。
同社は町にSOを構えるセキュリティーソフト開発会社サイファー・テックの吉田基晴社長が13年に設立。津波被害が想定される町の風景を残そうと写真データをネット上に保存・閲覧できるサービスも始め、地域に根ざした事業展開に取り組んでいます。
同町ではIT関連企業「鈴木商店」や「たからのやま」も、ITの普及や地域住民同士の交流を目的としたカフェをそれぞれオープンさせています。
SOの新設が相次いだのは三好市。昨年までの1社から今年新たに4社が進出しました。休廃校校舎の無料貸し出しや視察ツアーといった市の誘致活動が実を結び、スポーツ用品製造販売の「風の株式会社」、家事代行業「ベアーズ」などIT以外が進出したのも特徴です。
一方、県内きっての先進地・神山町には9月、内閣府の小泉進次郎政務官が視察に訪れました。11月には内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の官僚がSO推進の方策を探るため6日間滞在するなどして、神山の知名度をさらに広めました。町には全国から行政や、民間企業・団体の視察団が訪れます。
こうした視察需要に照準を合わせた新ビジネスも生まれています。町内にSOを構える映像制作会社「えんがわ」は新会社を設立し、町内に少ない宿泊施設の建設に着手。町や町内企業から出資を募り、来春の開業を目指します。
徳島市のコンサルタント会社「リレイション」は、神山町でSO誘致に取り組むNPO法人「グリーンバレー」などを訪ねる研修ツアーを催しました。
県内全域にSOが進出し周辺事業が盛り上がる一方で、新たな課題も浮かび上がりました。自然災害です。8月の台風では、美波町のサイファー・テックのオフィスが浸水被害を受けました。徳島市にもオフィスを構えていたために業務に支障は出ませんでしたが、片付け作業に何日も要しました。12月になって山間部が雪害に見舞われた県西部にもSOは増えています。
大都市の企業が、徳島にSOを構える理由の一つが自然の豊かさ。都会とはひと味違うゆったりとした空気の中で働けるのが魅力だといいます。しかしそれは、災害の脅威と隣り合わせでもあります。SOは今後も増加が見込まれます。進出企業や誘致活動に取り組む自治体などは、災害を想定したリスク管理も考えていくべきでしょう。
(徳島新聞 2014年12月17日)