仕事の日に昼食にかける時間はどのくらいでしょうか。新生銀行(東京)が昨年、会社員を対象に実施した調査では平均22.1分と言う短さでした。仕事の合間に慌ただしく済ませるという現代の会社員の姿が浮かんできます。
そんな中、県内にSOを置く会社では、まかないをみんなで食べるという懐かしくも新しい試みがみられ、オフィスの食卓が社員の人間関係をつくる場となっています。
【神山町】
テレビ番組の編集や配信などを手掛けるプラットイーズ(本社・東京)が神山神領に置くSOえんがわオフィス。古民家をリノベーションした木造2階建てのオフィスで20人が働きます。2013年7月の開設時から、10人ずつに分かれて毎週水曜と木曜に、オフィス内の食卓を囲み昼食を取っています。
裏の勝手口から中に入ると、目の前にコンロとシンクのあるキッチンスペース。パート社員として働く地元の主婦(55)が、慣れた手つきで鶏肉を揚げていきます。正午頃になると社員たちが仕事の手を止め、食器を準備したり、お茶を入れたり。隅田徹会長(53)も外出先から帰ってきて、みんなそろって「いただきます」。
この日のメニューは鶏南蛮のタルタルソースがけ、具だくさんのみそ汁、シシトウとタマネギの炒め物、ご飯。ボリュームも栄養もたっぷりです。シシトウは城西高校神山分校の生徒が育て、リヤカーに乗せて売りに来たものです。関西と関東の食文化の違いから最近行った店についてまで、みんなで話しながら1時間ほどの昼食を終えます。
東京の出版関係の会社で働いた後、Uターンした芳川公映(よしかわきみてる)さん(36)=阿南市羽ノ浦町古庄=は「東京では丼ものを買って慌ただしくデスクで食べていた。今は会社でのおいしい食事が楽しみです」と話します。
遠方から車で通う社員もいるので頻繁に飲み会は開けません。しかし、昼ごはんを一緒に食べ、歓談することで、互いの食べ物の好き嫌いから家庭のことまで自然に知ることになります。
【美波町】
クラウドコンピューティングのシステムを開発する鈴木商店(本社・大阪市)が美波町恵比須浜に構えるSOでも、社員4人が一緒に昼食を取ります。
ある日の昼食は、オフィスの中庭でのバーベキュー。手慣れた様子で炭から火をおこし、どんどん肉を焼いていきます。時には、庭で燻製料理を作ったりすることも。
自動販売機が1つあるだけの地域で昼食に困っていた社員を見かねて、2年前に近所の小林陽子さん(65)=移住相談業、同町奥河内=らがまかないの昼食を作ったのが始まり。昨年6月から週末は、オフィスの一角が「美雲カフェ」として地域に解放され、社員と客が一緒に昼食を取る姿も見られます。
本社には、音楽をヘッドホンで聴きながらコンピューターに向かい、同僚と話すのもネット上のチャットという社員も。昼食は各自ばらばらで、「今日は誰とも話さなかった」という人も多い。
鈴木史郎代表取締役(40)は「SOの社員同士が連れ立ってご飯を食べて、コミュニケーションをとるのを見るとうれしい」。作業自体は個人で行いますが、大きなシステムを組むのはチームプレーだからです。「SO環境に引かれ、入社する優秀なエンジニアもいる」とも話していました。
(徳島新聞 2015年7月13日)